技術の進歩とともに進化を遂げた現代の放射線治療について、専門医が詳しく解説します。
放射線治療とは
放射線治療とは、医療用の放射線を用いた治療法で、主にがんの治療に使われます。放射線にはX線や電子線、陽子線など、性質や浸透力が異なるいくつかの種類があり、これらの放射線をがんが位置する場所によって使い分けます。
放射線治療の目的は、がんの根治を目指すものから、症状の軽減や緩和、再発や転移の防止までさまざまです。患者様の病状や生活スタイルなどに応じて治療計画を立てていきます。
放射線治療は基本的には外部から放射線を当てるため、手術のように体を切開することはなく、痛みやしびれなども一切ありません。手術と比べてとても低侵襲な治療であるといえるでしょう。

治療のイメージは?
治療のメカニズムは、高エネルギーの放射線を体に照射することでがん細胞の遺伝子に損傷を与え、がん細胞の分裂や増殖を抑制するというもの。狙った場所に効果を発揮する局所的な治療であることも大きな特徴です。
放射線の照射はイメージが湧きづらいかもしれませんが、虫眼鏡で太陽光を集める実験を想像すると分かりやすいかもしれません。
通常、太陽光が当たる場所は穏やかに温まるだけで特段の害はありません。しかし、虫眼鏡を使って太陽光を一点に集中させると、その部分だけ物を燃やすほどの強い熱を発生させることができます。放射線も同じように、集中させることで局所的に作用させることができるのです。

技術進化でより安全に
局所的な治療とはいえ、放射線はがん細胞だけでなく、周囲の正常な細胞にも影響を与えます。基本的に、正常な細胞は遺伝子の修復能力が高いため、損傷してもすぐに修復されますが、場合によっては、皮膚炎などを引き起こす可能性があります。放射線治療ではこうした副作用が懸念されますが、最新の医療技術や機器の発展により、そのリスクはかなり軽減できるようになってきました。
まず挙げられるのは、検査精度の向上です。現在ではMRI(磁気共鳴画像法)やPET(陽電子放出断層撮影)などの検査によって、病気の進行状況や腫瘍の大きさを詳細に把握し、三次元的に視覚化できるようになってきました。正確な地図を手にしていれば目的地に迷わずたどり着けるように、病気の場所が正確に分かれば、より的確な照射が可能になります。
検査精度の向上が、そのまま照射精度の向上につながっているというわけです。
開発が進む治療装置
次に、放射線照射装置の進化です。放射線治療も技術開発が進み、三次元的な治療を行うことが可能になってきました。当院では高精度放射線治療装置TrueBeam(トゥルービーム)を導入し、最先端の「強度変調放射線治療」を行っています。
強度変調放射線治療とは、線量の異なる放射線を組み合わせて多方向から照射することで腫瘍部分のみに高い線量を当てられる革新的な治療のこと。腫瘍がどれだけいびつな形をしていても、検査によってその形が把握できていれば、コンピューター制御によって的確に照射を行えます。
一番のメリットは、がん細胞部分の線量は増やしつつ、周りの組織への影響は最小限に抑えられることです。このことによって合併症を軽減しつつ、根治性を高められるようになったのです。

あっという間に治療が完了
放射線治療技術の進化は治療効果を高め、リスクを軽減しただけではありません。実は治療時間も大幅に短縮されています。強度変調放射線治療の治療時間は5分ほど。照射だけなら約2分で終わります。「もう終わったの?」と驚かれる方も少なくありません。
放射線の照射中は動かずじっとしている必要がありますが、2分程度であれば患者様に大きな負担はかかりません。短時間で終えられることも放射線治療のメリットになっています。
他治療との組み合わせ
放射線治療は他の治療と組み合わせることでより高い効果を発揮する場合があります。
例えば、手術でがんを完全に取り切れなかった場合には放射線治療で周辺に残ったがんを除去し、再発や転移を抑えることができま
す。また、がんが広がり、体積が大きくなってしまった場合には、抗がん剤との組み合わせも考えられます。範囲を絞った放射線治療と化学療法を並行的に行えば、根治を目指すことも可能です。
当院は救急医療にも長けた総合病院ですので、放射線治療における迅速な対応はもちろん、さまざまな合併症に対してもしっかりと対応できる体制を整えています。
緩和的治療も選択肢に
高齢社会においては緩和的な治療も重要です。高齢になると「もう歳だから放射線治療をしても仕方ない」と治療を諦めてしまいがちですが、放射線治療によるメリットは年齢にかかわらず享受できるもの。つらい症状を一週間程度で改善できる場合も少なくありません。当科では緩和ケアを熟知しているスタッフとともに、“元気でいられるための放射線治療”にも積極的に取り組んでいます。
便利で手軽な治療に
放射線治療は一度で終わることもありますが、正常な細胞の保護や副作用の管理などの観点から、複数回にわたって行われることがほとんどです。外来に何度か通う必要はありますが、その1回1回は短時間でパッと済ませられるようになってきました。
もし、もっと負担の少ない治療はないのかな?などとお感じでしたら、まずはお気軽にご相談ください。患者様のQOLを考えた最適な治療を専門医がご提案いたします。






