循環器内科

心房粗動

心房粗動とは

心房粗動(しんぼうそどう)とは不整脈の一種で、心臓の右心房内で電気信号が円を描くように回り続けることで、心房が1分間に250回〜320回程度収縮する状態を指します。震えている状態に近く、血液を送り出す有効な収縮とはならないため、心臓のポンプ機能が低下してしまいます。

似た病気に心房細動(しんぼうさいどう)がありますが、心房細動が「バラバラな震え」であるのに対し、心房粗動は「規則的で速い」点が大きな違いです。どちらも心房内に血液が滞りやすく、血栓ができてしまうリスクがあるため、正確な診断と適切な対策が必要とされます。

心房粗動のイメージ|右心房内に電気信号のループが発生します

症状

強い動悸や息切れ

心拍数が一定のまま速くなるため、激しい動悸や階段を上った際の息切れを自覚しやすくなります。心臓が常に全力疾走をしているような負荷がかかり、日常生活の中で強い不快感やめまい、呼吸のしづらさを感じるケースが多くみられます。

胸の不快感や疲れやすさ

胸が締め付けられるような違和感や、全身の倦怠感が現れることがあります。これらは心臓の送り出す血液量が不足することで起こります。単なる疲れや加齢によるものだと見過ごさず、自身の体調変化に注意を払ってください。

無症状である場合も

無症状である場合も見受けられますが、それでも後述するリスクは存在しますので、心房粗動が見つかった場合は放置せず適切な治療を受けることが大切です。

原因

加齢や生活習慣病

加齢による心臓組織の変化は、電気回路の異常につながります。さらに高血圧や糖尿病などで心臓への負荷が高い状態が続くことで、さらにリスクが高まります。

心臓の病気や心臓手術

心筋梗塞心臓弁膜症の既往、あるいは心臓の手術を受けた経験がある場合、それらが引き起こした心臓組織へのダメージが電気の通り道を邪魔して発症の原因となります。心臓に持病がある方は定期的な検査を行い、不整脈の兆候を早期に捉えることが大切です。

放置した場合のリスク

脳梗塞の発症リスクが高まる

心房が正しく収縮しないことで血液がよどみ、血栓と呼ばれる血のかたまりが作られやすくなります。この血栓が何かの拍子で脳に飛んでいき、脳の血管を詰まらせると重症度の高い脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こすため、不整脈自体の治療と並行して血栓予防の対策も極めて重要です。

心不全の発症リスクが高まる

頻脈の状態(脈が速い状態)が長く続くと心臓の筋肉が疲弊し、全身に十分な血液を供給できなくなる心不全を招きます。足のむくみや横になった時の息苦しさは心不全のサインである可能性があるため、早急に専門医の診察を受けてください。

検査と診断について

心電図検査

心房粗動に特有の鋸歯状波と呼ばれるノコギリの刃のような波形を確認します。短時間の検査で見つからない場合は、24時間の心電図を記録するホルター心電図検査を行い、日常生活の中での不整脈の出現頻度を詳しく調べます。

ホルター心電図検査

超音波検査

心エコー検査によって心臓の形や動き、弁の機能を詳細に確認します。心臓の中に血栓ができていないか、あるいは心筋肥大などの基礎疾患が隠れていないかを評価し、一人ひとりの状態に合わせた最適な治療方針を決定します。

治療法

薬物療法

脈拍数を適切に抑える薬や、電気の乱れを整える抗不整脈薬を使用します。また脳梗塞を予防するために血液をサラサラにする抗凝固薬の服用も検討されます。なお、薬は症状を和らげますが、根本的な完治を目指すものではありません。

カテーテルアブレーション

カテーテルと呼ばれる細い管を通じて機器を挿入し、不整脈の原因となっている異常な電気回路を物理的に遮断します。心房粗動はこの治療との相性が非常に良く、高い確率で根治が期待できるため、多くの病院で推奨されている選択肢です。

心房粗動に対するアブレーションの成功率は90パーセント以上と非常に高く、抗凝固薬をはじめとしたお薬の離脱も期待できます。動悸の不安から解放され、発症前のような活動的な生活を再び送れるようになる点が魅力です。

外科的な手術とは異なり胸を開かないため、体への負担が軽く、術後の回復も早いのが特徴です。通常は3泊4日程度の入院で済むことが多く、早期に社会復帰が可能です。仕事や家事で忙しい方にとってもメリットの大きい治療です。

カテーテルアブレーション治療についてみる

よくある質問と回答

Q
心房粗動が原因となる突然死のリスクはありますか?
A

心房粗動そのものが直接の原因となって突然死を招くケースは非常に稀です。しかし治療せずにいると心不全が悪化したり血栓が脳に飛んで重症の脳梗塞を引き起こし、それらは最悪の場合、死に至ります。命を守るためには、合併症を防ぐための管理が不可欠です。

Q
心房粗動の緊急性の高い症状とは?
A

安静にしていても脈拍が1分間に150回を超え、強い息切れやめまい、胸の痛みを感じる場合は緊急性が高いと言えます。心臓のポンプ機能が急激に低下し、意識を失う恐れもあるため、このような場合は速やかに救急外来を受診してください。

Q
発作が起きた時にはどうしたら良いですか?
A

まずは安静にして様子を見ましょう

まずは安静にしてください。歩行中、運転中であれば安全な場所にとまって転倒や事故を避けるようにしましょう。
多くの場合はしばらくすると落ち着きます。

もし、強い胸の痛み、意識が遠のく感じ、強い息苦しさがある場合は、すぐに救急車を呼んでください。
強い発作が起きた場合は、早めにかかりつけ医を受診して状況を報告して相談しましょう。

日常生活における注意点について

  • 塩分制限:心臓への負担をおさえるために塩分制限が必要です。1日あたり6gが目安となります。
  • 飲酒と禁煙:飲酒は適量を心がけ、喫煙されている方は禁煙しましょう。十分な睡眠をとり、バランスの良い食事を心がけることも大切です。
  • カフェイン摂取:過剰なカフェイン摂取は避けましょう。コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどの摂取量に注意しましょう。
  • 水分補給:暑い季節や入浴後は脱水にならないように、水分の摂取を心がけましょう。
  • 運動習慣:適度な運動を継続しましょう。プールでの水中ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
  • 肥満の防止:適正体重を維持し肥満にならないようにしましょう。
  • 服薬管理:お薬を出されている方は医師の指示通りに服用しましょう。
  • 抗凝固薬:抗凝固薬(血液サラサラの薬)を服用されている方は出血しやすく止まりにくい傾向にあります。ケガをすることがないように十分に気を付けていただくと共に、出血が止まらない場合は医療機関に相談しましょう。歯科や眼科を受診する際はご自身がこれらのお薬を服用していることを伝えましょう。
  • 基礎疾患について:糖尿病・高血圧・脂質異常症などの基礎疾患がある方は適切な管理、コントロールを続けましょう。
  • 定期的な診察:指示されたスケジュールで定期的に受診し、医師の診察を受けましょう。

医師からのメッセージ

心房粗動は適切な診断と治療により管理できるご病気です。

特にこの病気はカテーテルアブレーション治療との相性が良いことで知られています。当院は年間700件以上のカテーテルアブレーション治療を行っている大規模治療施設です。経験豊富な専門治療チームによる最新かつ最善の治療法をご提供できる体制を整えています。

ささいなことでも構いません。ご自身の症状について不安なこと、疑問に思うこと、何でもお話しください。心のリズムを整え、安心して日常を送れるよう、私たちが全力でサポートいたします。

循環器内科部長・アブレーションセンター長
佐藤明

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月~金曜日 8:30-17:00/土曜日 8:30-12:30

この記事を書いた医師

佐藤 明(さとう あきら)
千葉西総合病院
循環器内科部長・アブレーションセンター長

(画像提供:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス