房室ブロック
房室ブロックとは
房室ブロック(ぼうしつぶろっく)とは心臓を動かすための電気信号が、心房から心室へうまく伝わらなくなる不整脈の一種です。正常な電気信号は心房にある洞結節という箇所で発生し、房室結節を経由して心室側の脚へ伝わります。この房室結節に異常が発生し、信号の伝達が遅れるもしくは遮断されるのが房室ブロックです。
通常はスムーズに流れる信号が滞ることで、脈が遅くなる徐脈を引き起こします。放置して良いものから、命に関わる深刻なものまで状態は様々です。

房室ブロックの度数による分類と特徴
1度
電気信号が届くまでに時間はかかっていますが、すべての信号が心室へ伝わっている状態です。自覚症状はほとんどなく、健康診断で偶然見つかることが多いのが特徴です。基本的には治療の必要はなく、経過観察となります。
2度
信号がときどき途切れてしまう状態で、ウェンケバッハ型とモビッツII型に分かれます。特にモビッツII型は突然3度へ移行し、心停止に陥るリスクがあるため注意が必要です。めまいなどを感じたら早めに専門医を受診しましょう。
3度
心房からの信号が全く伝わらなくなり、心室が独自の弱いリズムで補おうとしている深刻な状態です。(完全房室ブロック)強い息切れや失神を起こす危険が高く、命に関わります。多くの場合でペースメーカの植え込みなど、迅速な治療が求められます。
注意すべき自覚症状
めまいや失神
脈拍が極端に遅くなると脳に十分な血液が届かず、クラっとするめまいや一過性の失神が起こります。意識を失うと大きな怪我に繋がる恐れがあるため、予兆を感じたらすぐに座るなどして、まずは身の安全を確保してください。
強い息切れや倦怠感
全身の血液循環が悪くなるため、少し動いただけで息が切れたり、体が重だるく感じたりします。単なる体力低下や加齢のせいだと思い込みやすいため、以前より疲れやすくなったと感じる場合は心臓の検査を受けることが推奨されます。
原因
加齢
年齢を重ねることで、心臓内の電気の通り道が衰えることがもっとも一般的な原因です。これは誰にでも起こり得る老化現象の一つですが、放置すると徐脈が進むこともあるため、年齢相応の変化と捉えつつ正しく管理しましょう。
心疾患による後遺症
過去に心筋梗塞や心筋炎などの病気を患った際、心臓の筋肉に傷跡が残ることで信号の通り道が分断されることがあります。心疾患の既往歴がある方は、定期検査の際に不整脈の有無も併せて確認することが、早期発見に繋がります。
薬剤の副作用
高血圧や他の不整脈の治療で服用している薬が、心臓の脈を抑える作用を持つ場合があります。薬の飲み合わせや副作用でブロックが起きている場合は、処方内容を調整することで改善が期待できます。
検査・診断方法
心電図検査
心臓が拍動する際に発生する微弱な電気信号を波形として記録する、最も基本的な検査です。検査時の不整脈の有無を確認できます。ただし、検査時間が短いため、症状が出ていない時には異常が見つからないこともあります。
ホルター心電図検査
小型の心電計を体に装着し、日常生活を送りながら24時間にわたって心電図を記録する検査です。一時的にしか現れない不整脈を捕らえるのに非常に有効です。病院で検査機器を装着し1日を過ごしていただきます。当院の場合、ご自宅での注意点として、入浴、シャワーは不可、また電気カーペット、電気毛布は使用禁止とさせていただいております。
ホルター心電図でも捉えられない不整脈発作がある患者様には、極めて小型で皮下に埋め込む「植込み型心電モニター」が使用される場合もあります。 ※原因不明の失神や脳梗塞の既往がある患者様に限る



植込み型心電モニター(Reveal LINQ)
心臓エコー検査
不整脈は単独で発生するばかりではなく、多くの心臓病に伴うことが知られています。超音波を使って心臓の形態や動きを見て、何か心臓病が潜んでいないかを確認します。

心臓MRI検査
MRIにより心臓の筋肉の状態や動きを見る検査。シネMRI撮影では心臓の動きを動画で確認ができます。


出典: the University of Minnesota | Atlas of Human CARDIAC Anatomy http://www.vhlab.umn.edu/atlas/index.shtml
その他の検査
狭心症や心筋梗塞など、冠動脈の病気も不整脈の原因となるため、CTによる冠動脈検査や放射線同位元素による心臓の筋肉の検査(心筋シンチグラフィ)も行われる場合があります。
治療法
1度や、特定の2度房室ブロックで自覚症状がない場合は、すぐに治療を行わず様子を見ることがあります。ただし、症状がなくても進行する可能性があるため、定期的に心電図検査を受けることは必要です。
原因薬剤の中止・変更
現在内服しているお薬をお伺いし、飲み合わせや副作用により房室ブロックを引き起こしていないかを確認します。もしその可能性がある場合は、処方の内容を調整します。これにより症状が改善されるケースもあります。
ペースメーカー治療
脈が極端に遅くなり、めまいや失神などの症状がある場合には、ペースメーカー治療が行われます。ペースメーカーは本体を胸の皮膚の下に植え込み、そこから伸びる電線を心臓につなぎます。脈が遅くなった時だけ自動的に心臓に電気刺激を送り、適切な脈拍を保つ役割を果たします。

ペースメーカー植込みの手順
手技は通常、局所麻酔で行われます。意識がある状態ですが、麻酔が効いていますので痛みは感じません。
所要時間は全体で1時間程度で、手術室(カテーテル室)にて行なわれます。
- 局所麻酔を行い、鎖骨の下のあたりを3〜4cmほど切開します。
- ペースメーカー本体を植え込むためのポケットを作成します。
- 切開した部分から血管(静脈)を探し、その中にリードと呼ばれる電線を挿入します。レントゲンで確認しながら、リードの先端を心臓内の適切な位置まで進めて固定します。
- 心臓内に留置したリードと、ペースメーカー本体を接続します。
- 正常に作動するか、心臓に適切な電気刺激が送られるかなどをチェックします。
- 動作確認が完了したら、本体を皮下のポケットに収め、皮膚を縫い合わせて手技は終了です。
よくある質問と回答
水中ウォーキングなどの適度な運動は推奨されます。
適切な強度の運動は血流を促し、心肺機能の維持に役立ちます。
※激しい運動は避けましょう。
また毎日の習慣として手首などで脈拍を測る(検脈)習慣をつけましょう。
不規則な拍動や普段より極端に遅いと感じたときは、早めに医師へ相談できます。
心拍測定機能のあるスマートウォッチを活用することも有効です。
1度もしくが特定の2度で、症状がなければ治療せず経過観察となることが一般的です。
しかし、症状がある場合や3度(完全房室ブロック)の場合は積極的な治療の対象となります。
房室ブロックと診断されたとしても、寿命が大きく短くなるといったことは原則としてありません。3度房室ブロックなどの比較的危険な状態でもペースメーカーによる適切な治療を行えば、一般の方と変わらない寿命を全うすることが可能と言われています。
医師からのメッセージ
房室ブロックと診断をされても、ペースメーカー治療をはじめとする適切な治療を受ければ健常な方と同様の生活を送ることが可能です。
当院は年間300例を超えるデバイス植え込み件数と1,000名近い人数の遠隔モニタリングを実施する全国でも数少ない大規模不整脈治療施設です。
不整脈治療は我々医療スタッフが患者様に伴走し、長いお付き合いとなる治療と言えます。患者様がより良い生活を送るために我々は努力を惜しみません。気になる症状があればまずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた医師

中島 博(なかじま ひろし)
千葉西総合病院
不整脈センター統括顧問
写真提供:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス © 2025 Boston Scientific Corporation. All rights reserved.




