循環器内科

CMD(冠微小循環障害)

CMD(微小循環障害)とは?

CMD(冠微小循環障害、もしくは微小血管狭心症)とは、心臓に張り巡らされる冠動脈のうち、細く微細な箇所(微小冠動脈)に異常が生じる病気です。

心臓を動かすための栄養を運んでいる動脈を冠動脈といい、3本の太い血管があることが知られています。しかし、それら太い血管は全体の約5%に過ぎず、残り95%は太い血管から枝分かれした先の細い血管である微小冠動脈が占めています。冠動脈の血流に異常があることで起こる病気を虚血性心疾患と言いますが、それらの原因は、微小冠動脈の障害=CMDである場合があります。

要因の一つとして、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少があり、40代〜50代の女性の発症が多いことが知られています。

CMDのある方は、CMDでない方と比べて、3年経過時の死亡や狭心症、心筋梗塞のリスクが4〜5倍となるという報告があります。症状があれば、冠動脈(太い血管)だけでなくCMDについても検査を行い、必要な場合は対処することが大切です。

CMDとINOCAについて

一般的な狭心症は心臓の太い血管(冠動脈)が狭くなる病気ですが、そのうちカテーテル検査等で目立った狭窄(詰まり)が見られない状態をINOCA(非閉塞性冠動脈疾患による狭心症)と呼びます。このINOCAの主な原因(病態)として、太い血管の先にある目に見えない微細な血管の血流が滞る冠微小循環障害(CMD)と冠動脈の痙攣により血流が阻害される異形狭心症(冠攣縮性狭心症)があります。

つまり、一般的な狭心症という大きな枠組みの中に、血管が詰まっていない「INOCA(非閉塞性冠動脈疾患による狭心症)」があり、その重要な原因として「冠微小循環障害(CMD)」と「異形狭心症(冠攣縮性狭心症)」が存在するという関係性になります。

なぜ今まで見つけることが難しかったのか?

従来から冠動脈に異常がないにも関わらず、狭心症と同様の症状がある病態は知られており、微小冠動脈の障害によるものが含まれると考えられていました。しかし、一般的なカテーテル検査や造影CT検査では微小冠動脈は映らないため、評価する手段がありませんでした。近年、技術の進歩により新しい検査機器が開発され、CFR(冠血流予備能)やIMR(微小循環抵抗指数)などの数値を用いて、客観的に評価、判定ができる病気となりました。

症状について

代表的な症状は、一般的な狭心症と同様の症状(冠症状)となります。

  • 胸痛や胸部の不快感: 狭心症のような胸の締め付け感、圧迫感、重苦しさ(特に運動時やストレス時、夜間・早朝などに発作が起きやすい)
  • 息切れ・動悸: 坂道や階段を上るときに強い息切れを感じる
  • 放散痛:顎や歯、背中、肩などに広がる痛みを感じる場合もあります(これらを放散痛といいます)

また一般的な血管の狭窄を伴う狭心症では症状は5分以内で治る場合がほとんどですが、CMDではそれ以上に長く続くことがあります。場合によっては数時間持続する場合もあります。

検査について

カテーテルによる検査となります。圧・温度センサー付きワイヤー(プレッシャーワイヤー)を冠動脈内に挿入し、血行動態測定システム(CoroFlowシステム)を用いて、CFRおよびIMRと呼ばれる指標を計測します。一連の狭心症検査にプラスして行われる場合がほとんどです。

検査時間は通常のカテーテル検査に加えて5〜10分程度となります。コーヒー、緑茶などのカフェイン摂取は、検査前日よりお控えいただきます。

2つの重要指標

  • CFR(冠血流予備能): 運動をした際に安静時に対して血流量がどれだけ増加するかを示す比率(正常値: 2.0以上)
  • IMR(微小循環抵抗指数): 微小冠動脈の抵抗を表す指標(正常値は25未満、低いほど良い)

CoroFlowシステムについて

微小冠動脈を含む冠動脈の血流、循環を客観的かつ包括的に評価するために血行動態測定システムです。CFRやIMR、FFR(心筋血流予備量比)などの測定が可能。本システムを用いることで、冠動脈に異常はないが胸痛等の症状がある患者様に対して、CMDの評価・診断ができ、「隠れ狭心症」の発見に役立ちます。

治療について

CMDと診断された場合の治療は、原則としてお薬による治療、危険因子の管理、および生活習慣の改善となります。

お薬による治療

病状等に応じて各種お薬を服用いただきます。処方されたお薬は用法、用量を守って正しく服用しましょう。

作用 お薬の種類
心臓の過剰な動きを抑えるお薬 β(ベータ)遮断薬、カルシウム拮抗薬
血管を広げるお薬 ニコランジル、長時間作用型硝酸薬
血中の脂質(LDLコレステロール)を下げるお薬 スタチン
血管を収縮させる体内の物質をブロックするお薬 ACE阻害薬、ARB

※ACE阻害薬:アンジオテンシン変換酵素阻害薬、ARB:アンジオテンシンII受容体拮抗薬

危険因子の管理

高血圧、糖尿病、脂質異常症はCMDの危険因子です。これらのある方は、しっかりと管理のうえCMDを進行させないように心がけましょう。

生活習慣の改善

  • 食事:塩分は控えめに(目安は1日6g未満)、食べ過ぎない、野菜やきのこ類を積極的に摂ることを心がけましょう
  • 運動:有酸素運動が有効です。なお、運動は必ず医師の指示のもとで行うようにしてください。
  • 体重管理:定期的に体重を測定し、増えすぎることがないようにしましょう。
  • 禁煙:タバコは百害あって一利なし。禁煙は必須です。
  • 日常のストレス:できるだけストレスをためない生活を送りましょう。

よくある質問と回答

Q
CMDは治る病気ですか?
A

コントロールは可能ですが、治る病気ではありません

治療によるコントロールは可能ですが、残念ながら治る病気ではありません。
生活習慣の改善やお薬の服用などを通じて、無理なく付き合っていける方法を見つけることが大切です。

Q
CoroFlow検査は時間が掛かりますか?
A

5〜10分程度の検査です

本検査は狭心症の検査であるカテーテル検査に追加して行われることがほとんどです。この場合、CoroFlowの検査として掛かる時間は5〜10分程度です。

Q
CoroFlow検査を受ける際の注意点はありますか?
A

検査前日からカフェインの摂取は控えてください

カフェインは検査時に使用するお薬の効果を妨げる可能性があります。検査の前日からコーヒーや緑茶、エナジードリンクなどのカフェインを含むものの摂取はお控えください。

Q
胸の痛みがありますが、カテーテル検査では異常なしと言われました。CMDの可能性はありますか?
A

はい、あります。

胸痛等の狭心症症状の精査として行われる心臓CT検査やカテーテル検査で確認できるのは、太い冠動脈のみです。これらの検査では細い冠動脈に異常が生じているかどうかを確認、評価することはできません。
症状が続く場合はCoroFlow検査による、CMDの検査をおすすめします。

Q
一般的な狭心症と比べた場合のCMDの特徴とは?
A

症状の持続時間やどんな時に症状があらわれるかが異なる傾向があります

通常の狭心症は階段を登る、ふとんの上げ下ろしなどの労作時に症状が発生することが多い一方、CMDは安静時にも起きることがあります。
また、一般的な狭心症では症状の持続時間はほとんどが5分以内ですが、CMDではそれ以上の長時間に渡る場合があります。
また、患者の7割を女性が占めるという報告もある、女性に多い病気です。

Q
CMDと症状の似ている病気はありますか?
A

逆流性食道炎や食道けいれんが代表的です

胸の痛みが出る病気として、逆流性食道炎や食道けいれんがあります。
逆流性食道炎のお薬が効けば逆流性食道と判断でき、水を飲むと痛みが治る場合は食道けいれんと鑑別が可能です。

当院からのメッセージ

CMDは適切な治療と生活習慣の改善によって、症状をコントロールし、健康な方と同様の生活を送ることができる病気です。

当院は冠動脈の障害が原因となる虚血性心疾患の治療において、カテーテル治療と外科手術の双方で高度な治療を実施しており、24時間365日緊急対応が可能な体制をとっています。手術件数は合計で年間3,500例を超える実績を有する全国でも屈指の治療施設です。内服による症状の管理についても、幅広く膨大な経験を有しています。

胸の痛みなどの気になる症状があれば「年齢のせい」と放置することなく一度当院循環器内科にご相談ください。

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この記事を書いた医師

堂垂 大志(どうたれ たいし)
千葉西総合病院 循環器内科