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人工血管置換術

人工血管置換術(開胸・開腹による大動脈手術)とは

人工血管置換術大動脈瘤大動脈解離に対する治療のひとつです。胸(もしくはお腹)を切って開き、動脈瘤ができている部分の大動脈を切除した後、グラフトとよばれる繊維性のチューブ(人工血管)に置き換えます。 病変が上行大動脈から弓部大動脈にある場合は胸骨正中切開、下行大動脈から胸腹部大動脈にある場合は胸の左側を開いてアプローチします。

人工血管置換術のイメージ(弓部大動脈瘤)
大動脈の分類

人工血管置換術は長い歴史があり、長期での確実な治療成績が確認されている治療法です。手術に耐えうる十分な体力がある患者様においては、第一選択となります。一方、胸の骨を切る(開胸手術の場合)、また人工心肺を使用しての手術となるため体への負担は大きくなります。

適応となる疾患

人工血管置換術は主に以下の疾患に対して行われます。

  • 腹部大動脈瘤
  • 下行大動脈瘤
  • 遠位弓部大動脈瘤
  • 大動脈解離(解離性大動脈瘤)

人工血管置換術のメリットとデメリット

メリット

  • 根治性が高い:瘤を取り除いて人工血管を直接縫い合わせるため、再発や漏れの可能性が原則ない。
  • 長期耐久性に優れる:人工血管は数十年単位の耐久性があります。若年の患者さまにも向いています。
  • 解剖学的な制約が少ない:治療箇所の位置や形状によってはステントグラフトでは治療が出来ない場合がありますが、人工血管置換術であれば対応可能です。
  • 追加治療のリスクが低い:術後数年~十数年後の再手術はステントグラフト治療に比べて、少ないことが分かっています。

デメリット

  • 体への負担が大きい:切開(開胸・開腹)が大きく、人工心肺を使用するため、術後の痛みや体力低下が避けられません。なお、開腹手術はステントグラフト手術と比較すれば負担は大きくなりますが、開胸手術ほどの大きな負担はありません。
  • 入院期間が長い:ステントグラフト治療が数日~1週間程度の入院期間で済むのに対して、最短でも2週間程度の入院は必要です。社会復帰までの日数も長くなります。

人工血管置換術とステントグラフト治療の比較

大動脈瘤、大動脈解離の治療において開腹、開胸による人工血管置換術とカテーテルによるステントグラフト内挿術のいずれを選択するかは、個々の患者様のご年齢や全身の状態、ご本人の希望、治療箇所の解剖学的特徴等を考慮して総合的に判断されます。

一般的にはご年齢が比較的若く手術に耐えられる体力が十分にある患者様には、長期成績に優れ、確実性と安全性が最も高い人工血管置換術が第一選択(まず最初に考えるべき手術)となります。また、血管の蛇行が強いなどの解剖学的な理由からステントグラフトの適応外となる方も自ずと人工血管置換術が適応となります。

一方ステントグラフト治療は圧倒的に低侵襲であるため、ご高齢だったり併存症があるなどの事情で開胸・開腹手術が難しい方にも治療が行えます。

比較まとめ
ステントグラフト治療人工血管置換術(外科手術
切開傷3cm程度(脚の付け根部分のみ)大きい(開胸もしくは開腹)
入院期間短い(約1週間)長い(約2週間〜)
体への負担軽い重い
治療対象の瘤血管の形状や瘤の位置によっては適応外となる可能性あり原則として制限なし
確実性漏れ(エンドリーク)や位置ずれの可能性あり縫合するため漏れにくい
術後管理生涯の定期通院、検査が必要完治に近いと考えてよい

Q&A

Q
人工血管置換術は保険適用ですか?
A

はい。公的医療保険が適用されます。

公的医療保険が適用されます。また、高額療養費制度の利用も可能です。

Q
入院期間は?
A

2週間~5週間程度になります。

治療部位やご年齢、合併症の有無にもよりますが、最短で2週間程度。長い方では1カ月以上の長期となる場合もあります。

平均的な治療費用

70歳以上の方

対象者実際の窓口負担額(食事代込)
現役並み所得者Ⅲ 課税所得
約690万円以上
約¥300,000
Ⅱ 課税所得
約380万円以上
約¥230,000
Ⅰ 課税所得
約145万円以上
約¥140,000
一般課税所得
約145万円未満
約¥80,000
低所得者住民税非課税
(低所得Ⅱ)
約¥60,000
住民税非課税
(低所得Ⅰ)
約¥40,000

70歳未満の方

対象者実際の窓口負担額(食事代込)
区分ア年収約1,160万円以上約¥300,000
区分イ年収約770万円~1,160万円約¥230,000
区分ウ年収約370万円~770万円約¥140,000
区分エ年収約370万円以下約¥80,000
区分オ住民税非課税約¥60,000

上記は目安としての平均額になります。入院期間等により変動が出る場合があります。

医師からのメッセージ

人工血管置換術とステントグラフト治療はそれぞれメリットとデメリットがあります。当科では個々の患者様の病態や既往、生活背景などを総合的に勘案し、最適な治療をご提案します。

また、ステントグラフト治療と外科的手術のどちらにおいても豊富な経験を有しており、いずれかに偏ることなく、どちらにおいても質の高い治療を提供しています。

心臓血管外科部長
大動脈センター長
伊藤雄二郎

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この記事を書いた医師

伊藤 雄二郎(いとう ゆうじろう)
千葉西総合病院
心臓血管外科部長・大動脈センター長

写真提供:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス