心不全
心不全とは
心不全(しんふぜん)とは心臓の機能が悪く(不全に)なっている状態のことを指します。具体的には心臓のポンプ機能が低下することで全身に血液を送り出す力が弱くなり、それに伴い様々な不具合が発生します。
心不全に至るには様々な要因があり、なおかつそれらが複合的に組み合わさっている場合も多くあります。あらゆる心臓の病気の最終像が心不全と考えることができます。慢性心不全が誘発する危険な不整脈が原因となって急死(心臓突然死)に繋がることもあり、適切な対処を行うことが大切です。
心不全には悪くなるスピードと症状の現れ方によって慢性心不全と急性心不全の2種類がありますが、このページではおもに慢性心不全について説明します。
慢性心不全と急性心不全の比較
| 急性心不全 | 慢性心不全 | |
| 進行するスピード | 数分〜数日のうちに悪化(急激) | 数ヶ月から数年かけて進行(徐々に) |
| 代表的な症状 | 激しい呼吸困難や冷や汗 | 階段での息切れ、足のむくみ、疲れやすさ |
| 身体の状態 | 代償機能が追いつかず、命の危険がある | 体が不調に慣れ、完調ではないが動ける |
| 治療の目的 | 症状を早急に和らげて命を救う | 症状のコントロールと進行予防 |
症状
心不全の症状は、ポンプ機能の低下=血液を十分に送り出せないことに起因するものと、うっ血=全身の血液を心臓に戻しきれず肺や他の部位にたまってしまうことによるものの2つに分類されます。
ポンプ機能の低下による症状
- 疲れやすい
- だるさを感じる
- 動悸
- 手足の冷え
- 集中力の低下、めまい
うっ血による症状
- 息切れ、呼吸困難(進行すると安静にしていても息苦しさを感じるようになります)
- むくみ(特に足の甲、足首、すねに強く出る傾向があり、指で押すと跡が残るという特徴があります)
- 起坐呼吸(きざこきゅう・仰向けに寝ると息苦しくなり、体を起こした姿勢の方が楽である状態)
- 夜中に息苦しさで目が覚める(発作性夜間呼吸困難)
- 急激な体重増加
- 夜中に何度もトイレに行く(夜間頻尿)
- お腹が張る、食欲不振
息切れ・呼吸困難は特に心不全のサインとして重要と言われています。
原因となる主な病気
虚血性心疾患
血流が不足することで心筋がダメージを受け、心臓のポンプ機能が低下します。
心臓弁膜症
心臓弁の異常は直接に血液の循環を阻害する要因となります。
不整脈
心拍の乱れがあると、スムーズに血液を送り出すことができなくなります。特に心房細動は有力な心不全要因のひとつです。
心筋症
心筋の異常は、心筋の収縮による血液の拍出を阻害します。
高血圧
長年の高血圧は、心筋を厚く、また硬くするため、ポンプ機能を低下させます。
その他、薬剤や先天性心疾患、内分泌疾患(甲状腺の異常など)、感染症などが原因となる場合もあります。
検査
まずは問診を行い、息切れ、倦怠感やむくみなどの心不全の症状がないかを伺います。また、糖尿病などの併存症が無いか、飲まれているお薬の有無や種類なども確認します。加えて、下記の検査を行い、原因疾患の特定や重症度の確認をします。
血液検査
心臓への負荷の程度を判断できる心不全マーカーの値を確認します。心臓への負荷が高まると値が高くなるBNPやANPなどのホルモンの値から、心不全の重症度や予後の予測が可能です。
心電図検査
心臓が動くときに発生する微弱な電気信号を記録する検査です。心臓の収縮を生む電気伝導が正常に行われているか、心肥大や危険な不整脈の有無を確認することができます。

胸部X線
X線を使って胸部の写真を撮り、心臓の大きさや形を確認する検査です。心臓が拡大している(心拡大)いないか、弁の状態、心臓のポンプ機能、肺に水が溜まっている(肺うっ血)状態などをチェックします。
心エコー検査
心エコー検査は、超音波を使って心臓の形や大きさ、壁の動き、弁の状態などをリアルタイムで観察する検査です。痛みもなく、体に負担の少ない検査であり、心筋の動きが悪くなった部分や、心臓のポンプ機能の低下などを詳細に評価することができます。

治療法
心不全の治療は心臓の負担軽減と心機能の改善が主となります。また、原因疾患(虚血性心疾患や弁膜症、不整脈など)の治療も並行して行われます。なお、残念ながら心不全は治る病気ではありません。症状をコントロールし、悪化を防ぐこと、それらにより病気と上手に付き合っていくことが重要となります。
薬物療法
心臓の負担を軽減するための利尿薬や、心機能を改善するβ遮断薬、血管拡張薬、強心剤などが用いられます。
デバイス治療(心再同期療法)
心臓の動きがギクシャクする同期不全による心不全に対しては、両心室ペースメーカー(CRT-P)や両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(CRT-D)により動きを整える「心再同期療法(CRT)」を行う場合があります。

重症心不全に対する治療
重症例で、薬物療法では十分な治療効果が得られない場合にIABP(大動脈内バルーンパンピング)や補助人工心臓(VAD)でポンプ機能を補助する場合があります。
予後について
心不全の患者様の予後(余命)はあまり芳しいものではありません。心不全と診断を受けた方の5年生存率は約50%~60%との報告されており、ほとんどのがんよりもさらに厳しいデータとなっています。ただし、重症度や原因疾患、ご年齢などにより、予後は大きく変動します。以下は世界的に用いられているNYHA(New York Heart Association)分類に基づく一般的な情報をご提示します。
| NYHA分類 (心機能クラス) | 症状の目安 | 身体活動の制限 | 予後(年間死亡率の目安) |
| I度 | 心疾患はあるが、普通の身体活動では症状がない。 | なし | 5%未満 |
| II度 | 普通の身体活動(坂道や階段をのぼるなど)で症状(疲労、動悸、息切れ、狭心痛)がある。 | 軽度 | 5〜10% |
| III度 | 普通以下の身体活動(平地を歩くなど)でも症状がある。 | 高度 | 15〜30% |
| IV度 | 安静にしている、あるいはわずかな活動でも症状がある。 | 非常に高度 | 50〜60% |
進行に伴い予後は急激に悪化します。進行すると致死性の不整脈や血圧が維持できなくなる心原生ショックなどによる突然死(急死)を招く場合もあります。心不全は軽度のうちに発見し、治療に取り掛かることで、進行を食い止めることが重要です。
予防や日常生活での注意について
心不全の発症予防には原因となる疾患をしっかりと治療すること、また生活習慣の管理が重要です。
- 心臓への負担をおさえるために塩分制限が必要です。6g/日が目安となります。
- 飲酒は適量を心がけ、喫煙されている方は禁煙しましょう。
- 心臓に優しい入浴を心がけましょう。(浴室と脱衣室との温度差を減らす。ぬるめのお湯で半身浴など)
- 十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけることも大切です。
- 毎日定期的に体重を測定しましょう。急激な体重増加は心不全悪化のサインです。
- お薬を出されている方は医師の指示通りに服用しましょう。お薬が多めで、飲み忘れが怖い方は薬剤の一包化をご検討いただいても良いと思います。
- 適切な運動は予後の改善に繋がると言われていますが、どの程度の運動が適切であるかは患者様一人ひとりの状態によって異なります。医師と相談のうえ、ご自身の状態に合わせた運動を心がけましょう。
- ご自身の病気の状態を確認することはとても大切です。医師の指示に従い定期的に検査、診察を受けるようにしましょう。
当院からのメッセージ
心不全は、進行すると予後が急激に悪化する病気です。進行してしまう前に発見して適切な治療を行うことで重症化を防ぐことが大切です。当院では心不全の原因となる各種疾患の急性期治療を手掛けています。気になる症状があれば、まずはご受診ください。
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