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最小侵襲 人工関節手術

最小侵襲人工関節手術について

最小侵襲手術(Minimally invasive surgery: MIS)による人工関節置換術は、皮膚、関節包、筋肉への切開をできるだけ最小限にとどめて人工関節に手術を行う方法で数年前から米国で試みられました。使用する人工関節部品は従来のものとは変わりませんが、(一部のメーカーで、改良されています)この技術によって術後の痛みは劇的に軽くなり、リハビリの早期開始、早期退院、そして早期社会復帰が可能となりました。以前は(また今でもそうですが)、手術に痛みを伴うのは当たり前で、大きく切ったことで患者さんが、より痛い思いをしなくてはならないことになっても、手術成績を重んじるのが、我々整形外科医の間で一般的でした。しかし、もし、ダメージを最小限度として同じ成績の手術ができ、なおかつ痛みも少なくなればそれに勝ることはありません。

近年、このようなMISによる人工関節置換術のニーズは、高まるばかりで、2004年の米国整形外科学会(AAOS)での報告によるとMISによる人工股関節置換術(THA)は、全体の7割に達しているとのことでした。またインターネット(Yahoo!、Googleなど)でMISを検索すると膨大な件数がヒットされるようになり、今や全世界的に普及されつつあります。現在、米国、日本での人工関節手術件数はそれぞれ年間50万件、10万件に達するとも言われ、かなりの数の患者さんが人工関節の手術を受けていることがうかがわれます。日本では現在、MISは全人工関節件数のおよそ3割を占めると考えられますが、今後さらに増えていくことが予想されます。

これまでの我々の臨床経験から得られたMIS法と従来法との相違(TKAについて:図1)およびMIS -人工関節置換術の長所と短所(MIS & THA:図2)をまとめてみました。施設によって多少の相違はありますが、基本的には手術後の痛みが少なくてリハビリがスムーズで社会復帰が早いというコンセンサスは変わりません。但し、出血量や関節の動く角度には差が出ないこと、術後一定期間を経過すると従来法との間には差はなくなるということも分かってきました。しかし、人工関節の手術年齢が若くなるにしたがって’傷が小さい’というのは特に女性にとって大きなメリットであることには異論はありません。MIS - THAにおいては、実際、下着で傷が完全に隠れるということで大変喜ばれています。

しかし、いいことばかりではありません。当然このような手術手技を、行うことができるようになるためには、それ相応の経験と確かな腕が必要です。また患者さんもいろいろですから、すべての人がMISで手術を受けることができるわけでもありません。術前の関節の変形が強い場合はMISが適用できない場合もあります。小さい傷で、手術は済んだとしても、中に入った人工関節が変な格好で入ってしまったらどうなるでしょう。現在の人工関節は、50年以上の歴史があり、改善に改善を繰り返しており、的確な手術ができれば、15年以上の耐用年数があると思われますが、変な格好で人工関節が入ってしまったら、成績は当然悪くなり、患者さんの満足度も低くなるでしょう。MISにこだわったために、かえって手術後の成績が悪くなってしまうようなことは絶対に避けなければなりません。

当院では、平成15年以降、MISの技術をいち早く取り入れ、良好な成績が得られています。当初は、変形の軽い患者様のみに限らせていただきましたが、現在ではさらなる手術機械の改良と医師スタッフの技術の向上もあり、約80%の患者様に10cm以下の傷で手術を行っております。MISの普及によって、人工関節置換術は、より多くの、そしてより若い患者様が安心して受けられる手術になりつつあります。

慶応義塾大学整形外科
二木 康夫