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マルチスライスCT 心臓カテーテル検査はもういらない

心臓カテーテル検査はもう不要

今までは、狭心症の原因となる冠動脈(心臓をとりまく血管)の狭窄(つまり)を発見するために、直接手足の動脈からカテーテル(管)を入れていく心臓カテーテル検査が当たり前のように行われてきました。

しかし最近、新しいCT機器であるマルチスライスCTが開発され、欧米の一流病院では、心臓カテーテル検査に代わって、冠動脈の狭窄の発見に使われるようになりました。このマルチスライスCTを用いると、普通のCT検査のように、大きな輪のような機械の中を身体がくぐり、数十秒ほど息を止めるだけで、冠動脈の異常がわかります。造影剤を使う点では、心臓カテーテル検査と差がありませんが、動脈に針を刺してカテーテルを入れていく必要がないため、危険性はほとんどなくなりました。四肢の動脈に針を刺すと、動脈の血圧は高いため、検査後の止血がきわめて重要です。昔は足の付け根からカテーテルを入れていましたが、それでは検査後ベッドの上で数時間安静にしていることが強要され、トイレにも行けず腰も痛くなり、食事も取りづらいという。かなりの苦痛を伴います。最近は肘や手首の動脈を用いることにより、これらの不具合がかなり軽減されていますが、止血がうまくいかないと大出血や大きな血腫(血の塊)が生じて危険な状態になる可能性がある点では、変わりありません。またカテーテルを手足の血管から心臓まで進めていく過程で、カテーテルが血管を傷つける可能性は低いながら常に存在します。また、カテーテルに付いた血の塊が脳にとんで、脳梗塞を起こす可能性も0ではありません。マルチスライスCTでは、造影剤を使う場合でも手の静脈から点滴をするように造影剤を注入するだけですので、危険性の高い動脈には一切触れません。したがって、動脈に針を刺してカテーテルを入れていくことによる危険性は全く生じません。検査時間も1分以内で、検査後も特別な止血操作とか安静時間は必要でなく、外来での待ち時間中に検査を終えてそのまま帰宅できる、という大きなメリットがあります。

以上のように、マルチスライスCTは、身体に優しく安全な検査法として、煩雑な心臓カテーテル検査に代わっていくものと考えられています。

現在マルチスライスCTは、その機能によって、8列、16列、32列、40列、64列、256列という種類があります。列数の多いものほど高性能と考えられています。2004年度頃から16列を主体に日本に導入され始めましたが、まだまだ数が少なく、非常に高価であることもあり、導入できる病院はほんの一握りです。32列、40列、64列となると、さらに数が少なくなり、日本全国で64列マルチスライスCTを保有している病院は数十か所と思われています。さらに、現在普及している高性能のマルチスライスCTでさえ、息止め時間が10〜20秒必要で、検査後の解析に20〜30分かかることも事実です。また、不整脈が少しでもあると、CTの画像が乱れ、また心拍数が遅過ぎたり速過ぎたりすると、それだけで良い画像が取れなくなってしまうことが指摘されています。つまり、今までのマルチスライスCTにも、それなりの弱点があったわけです。

256列マルチスライスCT(フィリップス社製)

“このCTは世界最高峰の性能を誇り、脈を遅くするベータ遮断薬という薬を事前に服用する必要が全くなく、どんな不整脈があっても関係なく撮影できる現在のフィリップス社製心臓CTをさらに発展、改良したものです。撮影システム、コンピューターシステム全てが新しくなり、機械自体が全部新規に開発された形となります。最短1.7秒程度での冠動脈の撮影が可能で、診断のためのカテーテル検査はほとんど不要になり、狭心症のスクリーニングはこのCTのみでできると考えております。”

三角 和雄

2008年11月より、千葉西総合病院にはフィリップス社製“Brilliance iCT”という256列マルチスライスCTが導入されました。このマルチスライスCTは当初、世界限定8台(アジア割当1台のみ)となっており、当院が世界でもっとも早く導入されました。

このCTが備えるBeat to Beat Delay Argorhythmというメカニズムは、心拍数が不整脈によって変化しても、それに追従してCTが機能するもので、心臓領域ではトップ・ブランドであるフィリップス社が、世界で唯一もっている特許です。

このメカニズムにより、心拍数が不整であったり、脈が速過ぎたり遅過ぎたりしても、ほぼ正確に冠動脈の狭窄度を検出することができます。また、検査時間も5〜7秒で、検査後の解析時間も10分以内と短縮されています。また造影剤がなくてもある程度冠動脈の状態が把握できるため、病変があるか、ないかという判断には造影剤を用いない単純CTとしても使用でき、特に造影剤アレルギーがある患者様にも検査を行うことができます。

以下に、心臓カテーテル検査、従来のマルチスライスCT、フィリップス社“Brilliance 64”マルチスライスCTおよびフィリップス社“Brilliance iCT”256列マルチスライスCTを比較して表を示します。

狭心症の検査法の比較
心臓カテーテル
検査
従来のマルチ
スライスCT
Philips社製
64列マルチ
スライスCT
Philips社製
256列マルチ
スライスCT
動脈損傷、不
整脈、脳梗塞
等の合併症の
危険性・検査
中、検査後の
出血の危険性
ありなしなしなし
造影剤アレル
ギーの危険性
ありありあり
(単純CT使用
の場合はなし)
あり
(単純CT使用
の場合はなし)
検査時間30分〜1時間1分以内10秒以内5秒以内
入院の必要性あり
(日帰りでも数
時間は病院内に
拘束される)
なしなしなし
外来での検査不可能可能可能可能
検査後の
当日運転
不可能可能可能可能
費用5〜10万円6〜7千円6〜7千円6〜7千円
STENT治療
後の定期検査
───不可能可能可能
64スライス
より高度
細血管の診断高度不可能可能可能
64スライス
より高度
検査の信頼性高度中等度高度高度
64スライス
より高度
不整脈・心筋症
による検査の限界
なしありなしなし

診断のための心臓カテーテル検査が、いかにコストが高く、相対的危険性があり、手間もかかり、心理的な不安を伴うかがわかると思います。狭心症の診断のための心カテーテル検査を行うことは、今や馬鹿げた時代になってきています。

[お問い合わせ]
千葉西総合病院 循環器コーディネーターまで