医療法人木下会 千葉西総合病院
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大動脈センター
 

大動脈瘤があると言われている方、あるいは
知人、家族の大動脈瘤のことが心配な方へ(19)

心臓血管外科部長  市原 哲也


  今回は、急性解離(加藤茶さんの病気)で緊急手術をお受けになりましたが、後で調べてみるとその施設がとんでもない所だということがわかり、何とかならないでしょうか、という問い合わせがございましたので、その件につき報告申し上げます。
 
  患者は40歳代男性、上記の病気に対しある施設で緊急手術をお受けになりました。手術も加藤茶さんと同じ(上行-弓部大動脈置換)で、術後2ヶ月経ちますが経過が思わしくなく、患者のご家族より私どもの施設に転院希望があり転院なさいました。手術記録によると、手術時間は15時間、人工心肺は7時間でした。そして術後経過が思わしくない理由は、MRSA(抗生剤が効きにくい細菌)による縦隔炎(手術の際切り開いた部分の炎症で、胸の真中の創が開いてしまい、その奥に膿がたまってしまった状態)を併発したためです。
 
  手術を行った施設の現状が非常に衝撃的でした。その現状とは、心臓血管外科医1名、心臓専門麻酔医はなし、人工心肺操縦技師もなく、手術の際には、その病院の一般外科医2、3名の手を借り、麻酔も常駐の麻酔科医(心臓専門ではありません)が受け持ち、人工心肺はその回路を卸す業者が操縦して手術を行っている、ということです。手術時間や術後の経過、合併症、そしてそれに対する処置の拙劣さから考えますと、その施設の現状に「さもありなん」と頷けますが、気の毒なのは患者やその家族です。
 
  術前状態の良い方であれば、この方と同じ手術(上行ー弓部置換)は5〜6時間で終わり、術後もさほど困難ではありません。術後脳合併症さえなければ、一時的に透析(一時的に腎不全状態に陥ることが多いのです)および気管切開による2、3週間の人工呼吸管理(呼吸のしかたが元通りに良くならないことが多いのです)が必要なことがありますが、この方のようなMRSAによる縦隔炎は非常に稀な出来事なのです。この方の術前状態は、と言いますと、手術日の前日夕方入院され、手術は入院翌日朝9時からなので、12時間以上も待てる状態であったことから、術前状態は極めて良好であったことがわかります。従って、慣れた施設であれば、前述のように手術は5〜6時間で終わり、術後は約1ヶ月の入院で済んだことでしょう。そしておよそ1、2ヶ月の自宅療養の後、再び仕事に戻れたことでしょう。確かに、術前状態の良い方は100%このように順調に行くとは限りませんが、90%以上の方は順調な経過を辿られます。
 
  これはもう、患者ではなく「犠牲者」です。この方にしても、手術記録や術後の経過から感じられることは、「よくぞ生還なさった!」という驚きと、「面白半分に手術をしやがって!」という憤りです。相撲においても、幕下相撲と横綱相撲との違いが歴然としているように、手術や術後経過にも、慣れた施設とそうでない施設との間には歴然とした違いがあるのです。慣れていない施設は、こういう重症疾患の手術をするべきではないのです。あたかも、小さな子供がおもちゃをいじっていて「こんなんになっちゃった〜、ウワ〜ン」と泣き喚いているように思われてなりません。患者は「おもちゃ」ではありません。
 
  胸や背中が痛いということで救急車により運ばれた施設の心臓血管外科がこういうふうである可能性はあるのです。このような事態を避けるためには、患者自身は痛い、苦しいでどうにもできないので、ご家族がそこの病院の職員に聞き出すしかないのです。
 
  質問内容は、(1)心臓血管外科医師数(2)麻酔医は心臓専門か?(3)人工心肺は専門技師が操作しているか?(4)急性解離、大動脈瘤破裂などの急性大動脈疾患は年間何例か?の4点が大切です。もし最初に運ばれた所に心臓血管外科がなく、ほかの施設への搬送が考慮されたならば、その搬送先施設について同様にお尋ね下さい。答えは(1)は常識的には3名以上、(2)、(3)はもちろん肯定され、(4)は「年間20件以上」でなければ不適切とお考え下さい。多ければ多い程、より適切です。多い施設は「年間60や70、80」というものがございます。不適切とわかったら、「適切な」施設への搬送をお願いなさるべきです。適切な施設は、この方のように12時間以上も待たせませんし、たとえ距離が離れていても、また何時であろうがそこへ救急車で迎えに行くとか、日中であればヘリで搬送されるとか、とにかくできる限り早く手術開始できるよう力を尽くすはずです。
 
  こういう情報は患者やその家族のために必要なものです。できれば、医療に携わる者が得ていることが望ましいのですが、なかなか困難なようです。この方のような例は決して稀ではございません。大切な方が「おもちゃ」にされないためにも、是非お尋ね下さい。たとえ「おもちゃ」になっても、治ればまだ救われるのですが、壊れっぱなしのおもちゃ、これは「あの世に行く」ことを意味しますが、そうならないためにも、運ばれた施設が適切か否かを是非お確かめ下さい。こういう「いいかげんな施設」は結構数多く存在しているのです。必ずお確かめ下さい。
 
 
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連絡先

千葉西総合病院代表
047-384-8111

大動脈センター 市原哲也

 

 
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